仙台高等裁判所 昭和28年(う)332号 判決
職権で調査すると、原判決は、その適条の説示において、原判示第一の所為は刑法第一七七条前段第一七九条に、同第二の所為は同法第一八一条に各該当すると説示した上、直ちに累犯加重及び右判示第二の罪の刑を基準とする併合罪の加重を行い、なお同法第六六条第七一条第六八条第三号による酌量減軽をして被告人を懲役三年に処する旨判示している。右の内原判示第二の強制わいせつ致傷罪の刑につき、無刑懲役と有期懲役との選択を特に判示しなかつた点は、判文全体の上から、その選択が行われている趣旨が窺われるからあえて違法とはいい得ないが、酌量減軽を行う旨を判示しながら懲役三年に処する旨を言渡したことは違法である。けだし、酌量減軽は、減軽の基準となつた刑では、その最下限を以てしてもなお犯罪に比照して重過ぎるときに之を緩和するために行うものであるから、酌量減軽を行つた以上、たとえ減軽した結果の刑の範囲内であつても、減軽の基準たる刑の最下減以上の刑を言渡すことは許されないものと解すべく、本件では減軽の基準となつた刑の最下限は三年の懲役であるから、酌量減軽の上なお懲役三年を言渡すことは許されないものと解すべきだからである。(大審院昭和七年六月六日判例集一一巻七五六頁以下参照)而して、右の違法は理由のくいちがい又は判決に影響のあることの明白な擬律錯誤であるから、原判決は此の点で破棄を免れない。
(後略)